『燃えよ剣』★8

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2回目のワクチン摂取の前に『燃えよ剣』を観た。今作同様「原作 司馬遼太郎、監督 原田眞人、主演 岡田准一」の組み合わせだった2017年の映画『関ヶ原』とだいたい一緒の印象だったが、新選組という題材のおかげで岡田のアクションの比重が多くとても楽しかった。ただ『関ヶ原』同様、脚本はわかりにくい。

新選組副長である土方歳三を通して新選組の結成、内紛、池田屋事件戊辰戦争等が描かれるのだが、やはり実話をベースにしているのでわかりやすく高揚感を得られるタイプの作品ではないと思う。結成から池田屋事件あたりまでは新選組の見せ場はたっぷりでおもしろいけど、その後はわりと地味だった。

アクションの完成度は直近の『DUNE』や数年前の『スター・ウォーズ』をはるかに上回るすばらしい出来だった。特に岡田准一伊藤英明の殺陣はかなり見ごたえがあり、30年以上前の時代劇全盛の時期が相手にならないくらいかっこいい。『るろうに剣心』以降の時代劇アクションに仕上がっていると思う。ただそれを「かっこいい!最高!」で終わらせる物語になっていないのが問題だと思う。個人から集団の戦いになるにつれて血生臭いものになり、戦闘も大規模だけど地味なものになる。そういう原作だから仕方ないのだけど、個人的には「ずっと個人戦を見せてくれないかな……」と思いながら観ていた。

中盤以降は戦闘が大掛かりになる一方で、柴咲コウが演じるお雪とのラブストーリーの比重が高まっていく。柴咲コウがとても美しく、原田眞人の近年の作品に出演していた吉高由里子有村架純の印象をあっさり抜き去ってしまった。これからは柴咲コウ様とお呼びしなければならない。そして戊辰戦争に突入して物語は終わる。土方歳三の生涯に対する感傷だけが残る。それはそれでいいと思うけど、自分には理解できない領域だった。ラブストーリー要素はおそらくフィクションだからそちらに傾くことはないのはわかっていても、戦争して人生を終わる以外に道は選べなかったのか。『青天を衝け』の高良健吾、もしくは『ゴールデンカムイ』のような道はなかったのか?そんなことに思いを馳せた。

岡田准一柴咲コウは最高だが、脇を固める鈴木亮平伊藤英明、山田涼介もすばらしかった。『銀魂』を読んでいたせいか密偵の山崎役の村本大輔が濃くて笑った。美術も編集のテンポも文句なしにすばらしい。脚本も2時間半の映画としてそれなりにうまくまとまっている。でもこれはドラマシリーズでやるべき作品だったと思う。もったいない。

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