Park Hye Jin『Before I Die』★8

Park Hye Jinのアルバム『Before I Die』を聴いた。何を書けばいいのかよくわからない。だけど何度もこのアルバムを聴いている。最近は1日に3回くらいこのアルバムを聴いている。聴けば聴くほどわからなくなる。

凄いアルバム、なのかはわからない。ただこういう人だったんだなあ、と思う。一体僕はこのアルバムを聴いただけで彼女の何がわかったんだ?

彼女はハウスミュージックに慣れ親しみ、それを楽曲にしている。クラブで流す音楽をそのまま録音しているわけではない。クラブで流れる音楽や雰囲気、そしてそこに集まる人、そして自分を音楽にしている。Park Hye Jinが前にリリースしたEPを聴いた時、きわめてハウス色の強い作り手という印象を受けた。しかしそれは半分当たり、半分外れた。彼女はハウスの申し子ではなく、ハウスに多大な影響を受けた上で自分自身の音楽を作り上げる音楽家だった。アルバムを聴いているとハウスのみならず、ヒップホップなどの要素も聴こえてくる。そしてそれは彼女がいわば文化全体から借用したものだ。彼女は文化からパクった素材を自由自在に操り、彼女自身の音楽を作り上げた。

そんなことは世界中どこにいたってできるはずだ。しかし彼女は韓国からロサンゼルスに拠点を移した。Apple Musicに掲載されている本人の楽曲解説を読めば、彼女がどういう心境であったのかを垣間見ることができる。ただ、大事なのは、彼女は自分自身で道を選び、そこにお金と時間を費やして冒険をしたということだ。彼女自身がどれほどの才覚を持った音楽家なのか否かは数年で判明するだろう。でもそんなことはどうでもよくて、彼女が自分自身の道を歩み、そこで吸った空気をそのまま音楽に落とし込んだという事実に、僕はたまらなく嫉妬する。

そんな気持ちにさせられたのは山口一郎以来だ。