『十三機兵防衛圏』★9

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『十三機兵防衛圏』をクリアした。トロコンまでやった。やりこみ要素はあるけどそれはまあ無視してもいいと思う。クリアまでのプレイ時間は40時間ほど。

正直、序盤は意図がわからず退屈したけど、それを把握した中盤以降は物語に引き込まれ一気にプレイした。シナリオとストラテジーゲーム部分が屈指の完成度だった。ただ、それらがうまく結びついていないように見えた。とはいえ中盤以降の怒涛の展開ですべて帳消しにする。それほどまでにシナリオが優れていて、同時に野心的なゲームだと思う。めちゃくちゃおもしろかった。

あらゆるSFの要素がてんこ盛りになっている。『エヴァ』『インターステラー』『宇宙戦争』『レディ・プレイヤー1』『20世紀少年』『マトリックス』『攻殻機動隊』『君の名は。』などの作品が頭に浮かんだ。それらの作品を楽しめる人ならきっと楽しめると思う。

ストラテジーゲームとしての完成度も高い。自分は『スパロボ』が好きでいくつかプレイしているが、こういう形のストラテジーゲームの形があるのだなあと目から鱗が落ちる思いだった。感触的には『ファイアーエムブレム』や『スパロボ』的なストラテジーと、『FINAL FANTASY VII REMAKE』的なATBを組み合わせたようなもののように感じた。技入力をする時に時間が止まり、ゆっくり考えつつ、選んだ瞬間世界全体が動き出す緊張感はたまらなかった。

続編は厳しいと思うけど、外伝、完全版、アニメ化などあらゆる展開を期待したい。

本当におもしろい作品は他のあらゆる関心を奪い去ってしまう。このゲームに熱中している間、他のあらゆることに手がつかない、とまではいかなかったけど(大人なので)、でも頭の中ではずっとこの物語について考えていて、それはとても幸せなことだった。

自分は冬坂、南、三浦、如月、沖野推しです。推しが多すぎる。

Porter Robinson『Secret Sky 2021』★10

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Porter Robinsonの『Secret Sky』でのライブを観た。Porter Robinsonの新譜『Nurture』はとても良くて、今もよく聴いている。EDM、というと厳密には違うのかもしれないが、いわゆるアメリカのエレクトロニック・ミュージック、シンセポップの音でありながら、同時に日本の音楽の影響を受けた音楽に思えた。

個人的にはEDMの音やフォーマットを展開しながら、同時に00年代のハウス、ラウンジ、エレクトロニカ周辺の影響を受けているように感じた。具体的に言うならFreeTEMPOラスマス・フェイバーが手掛けた中島愛、haruka nakamuraあたりで、実際に彼が聴いていたかはわからない。しかしPorter Robinsontwitter等で高木正勝やアニメからの影響については言及しているので、当たらずとも遠からずではあると思う。メロディの展開や空間の埋め方がどことなく日本的、というか偏執的な部分が出ていて、それをEDMのフォーマットにうまく落とし込んでいるように思えた。

その彼が主催するオンラインフェスティバルが開催されたので日本時間の10時くらいから観ていた。Baauerは次々とブラウザのタブでYouTubeの映像を開いていくVJがウケた。高木正勝は10分しかなかったが、不協和音のトラックをベースに、膝にお子さんを載せてピアノを弾くパフォーマンスがものすごくよかった。まさにオンラインで自由だった。録画だったのかもしれないがあまり気にしない。それを僕らはみんなで楽しんだ。セカオワはLOVEとNakajinのDJパフォーマンスで、BTS的なダンスポップとEDMの中間くらいのサウンドが楽しかった。REZZはDJっぽかった。

そして大トリのPorter Robinson。奥の壁と床にLEDが敷き詰められたパフォーマンスなのだが、曲がべらぼうによく、それに載せられる映像がストレートによく、その上Porterがピアノを弾く、歌う、踊る、サンプラーを弄るなどやりたい放題でひたすら楽しかった。完全に未来のDJだった。曲そのものが良いのに、アドリブで載せられるピアノ、そしてライブ用にアレンジされたドラムが異様に良くて、DJのパフォーマンスとしての完成形みたいだった。とにかく感覚的で、ビジュアルがそれを具体化しているのが凄まじく、今までに観たすべてのライブパフォーマンスを凌駕し、更新する最高のライブだった。ありがとうポーター。救われた。

高橋徹也『KAIBUTSU 2021』 ★8

高橋徹也ライブ配信『KAIBUTSU 2021』を観た。本当は観客を入れた上で配信する予定だったが緊急事態宣言に合わせて無観客で行われた。しかしとても良いライブだった。

昨年リリースされたアルバム『怪物』のアナログ盤のリリースを記念したライブだったが、無観客になったため販売は延期となった。だから高橋さん自身思うことは絶対にあったはずだ。でも最初のMCで、

「今日は急遽、配信という形になったけど、俺たちのやることは変わらない。画面の向こうから何か芸術的な方法で応援よろしく!」

と言った時点で勝利が確定したと思う。実際『怪物』の曲がセットリストの中心だったのだが、演奏が若々しく、前半に挿まれた新曲が新曲だとわからなかったほど。実際にソニー時代に書きながら新曲としては昨年の『怪物』が初(?)収録となった「グッドバイ グッドバイ グッドバイ」と並べても遜色がない若さ、青さがほとばしる新曲だった。

後半は「ハリケーン・ビューティ」「大統領夫人と棺」というインディーズ時代屈指の名曲が惜しげもなく投下され、そして満を持しての「真っ赤な車」はまさに最高潮だったと思う。ライブのトップバッターとして場を盛り上げるのとはひと味もふた味も違う名曲感が溢れていて楽しかった。全体的にソリッドな印象が強かったのは、鍵盤のsugarbeansが今回は欠席だったことも大きいと思うが、『怪物』というアルバムのその先を指しているようにも思えた。最後の披露された新曲「昨日まで」もまさに80、90年代前半のロックで、高橋徹也らしくないのにどうしようもなく高橋徹也でめちゃくちゃ良かった。

スターパインズカフェ側の撮影も以前よりずっとすばらしくなっていた。去年、配信に不慣れでガチガチに緊張していた高橋さんとは思えないほど、今夜は余裕綽々だった。人は変われる。成長できる。高橋徹也は本当にかっこいいと思う。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』★8

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名探偵コナン 緋色の弾丸』を観た。大傑作。脚本は『相棒』や『科捜研の女』で脚本を担当する櫻井武晴。今作で劇場版のシナリオを手掛けるのは5作目だが、個人的には『絶海の探偵』以来の傑作だと思う。

監督は永岡智佳。監督としては2作目だが、コナン劇場版には2013年以降『ゼロの執行人』以外は携わっていて、彼女が助監督を務めた『から紅の恋歌』と前作『紺青の拳』は個人的にコナン劇場版のトップ5に入る傑作だと思っている。同時に今作もそのクォリティに達している。

とにかくキャラの動かし方がうまい。なにせ今作は探偵役がコナン、赤井、世良、羽田、世良ママがいるのだが、ほぼ全員にしっかりと見せ場を作っている。加えて小次郎、灰原、園子が空気になっていない。それぞれに役割がちゃんとあって、まるで『アベンジャーズ』並の群像劇として仕上がっていた。

その上でトリックの種、及び事件の背景もしっかりしていた。このあたりはおそらく櫻井武晴の脚本が優れているところだと思う。動機づけは特に上手で感心した。一方、子供が退屈しないための活劇要素もふんだんに盛り込まれていてひたすら感心した。あとどう観ても東京オリンピックにしか見えない、でも商標が使えないスポーツの祭典が堂々と登場していて、ネタバレになるので何も言えないけど、誰もが想像できる結末を迎えていて最高に笑えた。

と本当に大傑作。個人的なコナンのベストは『瞳の中の暗殺者』『絶海』『から紅』『紺青』なのだが、そこに仲間入りを果たす大傑作だったなのは確定。

とにかく永岡智佳監督は凄い。青山剛昌は自身の作品を用いて青山剛昌ユニバースを生み出したが、永岡監督はそれをルッソ兄弟並のクォリティで仕上げることができる稀有な監督だと思う。声優が一部年を取りすぎている、美術が子供向けすぎるなど欠点もなくはないが、どう考えても日本のミステリィの映像化作品で今一番おもしろい。来年の予告もすごかった。永岡監督続投は間違いないと思うけど、それを願ってます。

『ゆるキャン△』 Season2 ★9

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ゆるキャン△ Season2』を完走。大満足。原作でも読んでいるので話の筋は大体わかっていたが、このアニメシリーズはマンガと同じ物語でありながら別のものを見せてくれるのが凄い。映像になることで物語を違う時間の流れとともに咀嚼させてくれる。

思い出深いのは第1話と最終話。おそらくはアニメオリジナルのパート。とはいえその部分でどうこうするためのものではない。原作には原作の流れがあるが、アニメにはアニメの流れがあるために、それを整えるために作られたパートだ。だけどその部分のおかげで、試聴まで数年待たされたアニメシリーズが特別なものとなり、そしてその余韻を静かに感じさせてくれた。

その作り手の細やかさと舞台となる山梨や富士山の豊かさに涙が溢れてしまった。なんてありがたい作品なのだと。

人が死ぬことや愛を告げること、戦うことだけが物語のおもしろさではない。平和な時代に旅をすること、仲間とともに遊ぶこと、一人でやってみること、見守ること、寂しさを感じること。それらすべてをおもしろいと思わせてくれる『ゆるキャン△』は特別な物語であり、特別なアニメシリーズだと思う。この先何度も観るはず。映画も楽しみだ。シーズン2ありがとう。またね。

『騙し絵の牙』★8

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『騙し絵の牙』を観た。監督は「桐島、やめるってよ」の吉田大八。Twitterで信頼してる人(佐久間さんとか)の間で評判が良かったので観たくなった。「桐島」が嫌いなので期待しなかったのだがとてもおもしろかった。

いわゆる出版社の話。経営陣のお家騒動と文芸誌、週刊誌等のメディア再編がテーマなのだが、きちんと出版が先行きが無い業界として描いているのが良かった。そのような状況下で松岡茉優が若手の編集者として編集業にこだわり、大泉洋が月刊誌の編集者としてルーティンを壊していくのが大まかな展開で、その先はネタバレになるので控えるが、個人的にはそこまで大きく騙されることなく、むしろ腑に落ちるラストを迎えたことが気持ちよかった。

というのも序盤はやはり好ましい描写とは言えなかったからだ。

経営者の逝去に伴う大きなホールを貸し切っての葬儀とか大物作家のパーティとか、その作家に対する篭絡とか、まだこんなことやってるのか……と気の滅入るような描写が多かった。松岡茉優の実家は古き良き街の本屋で、塚本晋也が父親を演じているのだが、僕が知る15年前の街の本屋さんにお客さんが割とたくさんいるのを見て東京という街への絶望が強くなるのが正直なところ。「まだこんな幻想にしがみつけるのか、地方はとっくの昔に本屋なんか消えたよ」みたいな。

多少ネタバレになるが、地方では20年前にあったこれらの幻想はきちんと決着がつき、新たな展開を迎える。その内容について思うところはあるが、今の現役世代に求められていることは旧世代の落とし前をつけて、新しいものを立ち上げる雰囲気なのだと思う。『シン・ゴジラ』におけるスクラップ&ビルドをより具体化したような現代の御伽噺に仕上がっていてとてもいい気持ちになれた。

吉田大八の映像は多少清潔すぎた気もするけど良かった。LITEの劇伴も、中毒性には書けるが、風通しがよかった。そして大泉洋は、原作が当て書きされたこともあるが、どハマりしてた。俳優としての大泉洋、もしかして優秀なのかも。今さらそんなことを思った。

『俺の家の話』★6

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『俺の家の話』を完走。作り手側の立場になればこの最終回の展開は理解できる。能「隅田川」をベースに現代劇を組み立てた上で逆算して展開を構成している。またSNSでリアルタイムで話題を稼ぐ手法として有効なのもわかる。それにいろいろなお話を作ってきたTBS&クドカン組だからこそ、この結末もアリじゃない?とは思う。

でも視聴者としてはこういうのを求めていなかった。人が死ぬ話は基本好きではないし、死んだ後死者が都合よく解釈される話も嫌いだ。ある程度死に向かって、視聴者に心の整理をさせてくれる物語ならまだわからなくもない。だけど今回は完全に不意打ちだ。そういうシナリオの組み立て方は別に否定しない。でも地上波のドラマの枠組みではやってほしくない。Netflixとか舞台、もしくは映画でやってくれ。この3ヶ月の時間を返して欲しい。

長瀬の最後の演技は確かに凄まじいものがあった。でもこんな長瀬は見たくなかった。